点字って知っていますか?最近ではパソコンやスマホの発達・普及で視覚障害者でも手軽に情報を得たり発信できる時代ですが、私が視覚特別支援学校に通っていた頃は活字を大きく拡大したものや点字を活用して勉強していました。今回は視覚障害者が使用している文字、点字についてまとめてみようと思います。
点字の歴史
まずは簡単に点字の歴史についてご紹介しましょう。
点字の起源は1670年、イタリアの発明家が点や線を組み合わせてアルファベットを現したのが始まりと言われています。その後、約200年前の1819年にフランス軍の将校が12個の点を使って夜間に命令伝達を行う「夜間読字」を考案します。
さらに軍とは別に、盲学校では夜間読字を視覚障害者用の文字として活用できないかという取り組みが続いていました。そこから盲学校の生徒だったルイ・ブライユという方が、夜間読字を6点のアルファベット表記に改良したものが生まれ、徐々に広まっていきました。
点字のことを英語で「braille(ブレイル)」と読むのは、彼の名前からきているみたいですね。
さらにそこから日本人向けに改良したのが静岡県出身の石川倉次という方です。
最初に8点で構成された点字を考案し、より改良を重ねて日本人向けの6点で構成された点字がまとめられたのが明治23年。同年11月1日に6点点字が正式に採用されました。
ちなみに、この6点点字が採用された日が日本の点字記念日に設定されています。
点字を書く・読むための道具
次にどうやって点字を書いたり読んだりするのか、どんな道具を使っているのかを紹介しましょう。
点字盤、携帯タイプの点字盤
まず、点字を手書きで書く道具は2種類あります。
木やプラスチックと金属でできている大きいタイプの点字盤と、持ち運びが楽なプラスチックでできた軽くて小さいタイプの点字盤です。
大きな点字盤は、「点字用紙」という点字を書く専用の用紙を点字盤上部の針で固定し、「ジョーギ」というこちらも金属でできた点字を書くための道具を点字用紙と点字盤にセットします。最後に持ち手が木材やプラスチック、先っぽが金属でできている「点ぴつ」という道具を使い、ジョーギに沿って右から左へ点字用紙に点をひとつひとつ打ち込む事で文字を書いていきます。書き終わったものを読む時には点字盤から用紙を取り外し、書く時とは逆に左から右へ読んでいきます。
改めて文章で説明すると難しいですねぇ。ちゃんと伝わってるでしょうか・・・。
パーキンスプレーラー
点字版のタイプライターのようなもの。点字を打つための6つのボタンと、スペース、改行など8つのボタンを使い左から右へ点字を打ち込んでいきます。手書き用の点字盤や携帯点字盤に比べ、点字を打つのはすごく楽ですが、とても重たいので持ち運びが大変です。
パソコン
普通のパソコンでもソフトをインストールする事で点字入力をすることができます。
たくさんのキーボードのボタンの中で使うものは約10個程度ですむので文章を打つ時はとても楽になりますが、通常のフルキー入力の際に使えるボタンが点字入力では使えない場合があったため、前職でパソコン講師をしていた時にはフルキー入力を勧めていました。
ブレイルセンス、ブレイルメモ
点字ディスプレイのついた小型のメモ帳サイズの電子機器で、パーキンスブレーラーやパソコンと同様、6点点字入力でメモを取れる他、ネット上のテキストデータやメールなどを自動で点訳してディスプレイ上に表示することができます。
使用者はディスプレイに浮き出た点字を触りながら書いたメモやテキストデータを読んで確認することができます。最近では機能も増え、アプリケーションや音声録音・再生機能など様々な機能がついています。
点字を勉強するメリット
最初でも書いたように、最近ではスマホやパソコンの発展で視覚障害者でも手軽に情報収集したり、小説などの作品に触れる事ができるようになりました。加えて紙媒体だとちょっとした資料でも嵩張ります。そのため、自然と点字を読む機会は減ってきています。
特に中途の方は、点字をイチから覚えるのに苦労している方も多く、最近は点字の読めない視覚障害者も多いようです。
私は子供の頃に点字を習い、点字で勉強し、点訳された小説達のおかげで様々な物語に出会ってきたので親しみがありますが、これから点字を習おうか悩んでいる方は、「点字を読める事でメリットがあるのか?」と考えている方も多いでしょう。
そこで、私の視点ですが、点字を習う・読むメリットを挙げてみようと思います。
時間帯を気にせず本が読める!
これ、私は点字を勉強する1番のメリットだと思っています。一度点の配置を指が覚えてしまえば、暗い場所でも本を読むことができます。寝る前に電気を消したまま読書して、眠くなったら読んだところでしおりを挟んでそのまま本の世界に浸りながら眠りにつける。読書好きにとっては幸せな時間です。
点字には漢字がない!
なんと、点字には漢字がありません。一応8点で構成された「8点漢字」というのがありますが、6点点字はひらがなと数字、アルファベット、句読点や「」や()などの記号しかありません。
眼振持ちで漢字が大の苦手だった私は、もし点字がなければ読書に没頭する事もなければ、こうやって文章を書く仕事に就くなんて事はなかったでしょう。
私が学生だった頃はスマホなんてなかったので、ひとつの漢字を調べるために「更に細かい文字の辞書を拡大読書器やルーペを使って調べる」という作業がとても苦痛でした。漢字が苦手な方はもちろん、目が疲れるという事もないので弱視の方にも点字を覚える事をおすすめします。
音声だけでは集中できない人にもおすすめ!
パソコンやスマホ、デイジー図書など、音声だけでも充分読書や情報収集、勉強する事は可能ですし、コンテンツもかなり充実しています。
ですが、音声だけではどうしても頭に残らない、聞き逃した部分を何度も巻き戻すのがめんどくさいと感じる時ありませんか?
実は私はこのタイプです。なので、「読書や勉強は点字派」です。
「自分のペースで読みたい」「自分で読む事で理解しやすい・頭に入りやすい」というタイプの方にも、点字はおすすめです。
最後に
かなりざっくりですが、点字の歴史から道具、点字を勉強するメリットまでまとめてみました。
世の中が便利になっていく事はとても嬉しいことですが、だんだん点字を活用している方は減っていっているようで少し寂しいですね。
私以外にもたくさんの視覚障害者を支えてくれた点字文化は、ずっと残っていてほしいです。
中途視覚障害者だけでなく、弱視、点字に興味を持ってくれた健常者まで、いろんな方に点字の魅力を知って、使ってくれたらいいな~と思い、記事を書いてみました。
子供の頃から慣れ親しんでいるものなのに、改めて文章化するのは難しいですね。
そりゃネット資料も少ないわけです(笑)
もし、「音声だけでは物足りない」「自分で読みながら読書や勉強がしたい」という方は、点字を勉強してみてはいかがでしょうか?
それから、なかなかいう機会はないので改めてここで書かせてください。
私たち視覚障害者が活用している資料や本は、点字・音声図書を含め、たくさんの支援者さんとたくさんのボランティアさんに支えられて作られています。
ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。