前回、私が通っていた視覚特別支援学校についてお話しました。私たち視覚障害者には、一人で家事や外出がスムーズにできるように訓練する施設や、あんま・針・マッサージ以外の職種につくための訓練施設があるんです。今回は、高等部を卒業後すぐに入所した視覚障害者の生活訓練施設についてお話していこうと思います。
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視覚障害者の生活訓練
私は、高校を卒業した後、視覚障害者の生活・職業訓練をする施設に約2年間入所していました。
視覚障害者の生活訓練施設には、手引きや白杖での歩行訓練をメインに行っている福祉センターや、短期で部屋を借り生活訓練を行う自立支援センターなど、全国各地に様々な施設があります。
しかし、歩行・生活・職業の全てを総合的に訓練する施設はそこまで多くありません。
私が進路指導の先生に一人暮らしやマッサージ以外の職業に就きたいことを相談したところ、残念ながら沖縄には総合的な訓練を行っている施設がないため、本土にある生活・職業訓練を進められました。
私が入所した生活訓練施設では、
- 視覚に障害を負ったことによって精神的な負担が来た方への「支援部門」
- 知的障害を重複して持っている方への「訓練部門」
- 私が高校卒業後すぐに入所した「生活訓練部門」
- 電話交換手の資格取得やパソコンを使った情報処理の訓練を行う「職業訓練部」
と大きく分けて4部門がありました。
視覚特別支援学校と同じく入所・通所している年齢層は幅広く、最年長は70代の方が入所されていました。
それぞれの部門に寮と訓練部屋があるため、けっこう大きな施設です。
もちろん地元に住んでいる方は通所で通うことも可能です。
私がいたところは外部施設との支援体制や連携が強く、あんま・針・マッサージの資格を持っている方が生活訓練をしている間、腕がなまらないように練習ができる施設や、知的障害を持った方が卒業後作業所などで働けるように外部の就労訓練施設と連携していたり、様々な方面でサポート体制が整っていました。
訓練施設では、利用者それぞれにケースワーカーがついて、本人のニーズに合った訓練を行います。
私が主に行っていた授業は白杖を使った歩行・夜間歩行訓練・調理訓練・音声を使ったパソコン操作・体育・活字の書き方・籐細工や編み物の手芸など様々な授業を行いました。
それぞれカリキュラムが違うので、個人の時間割に沿って授業が行われる教室へ移動して授業を受けます。
授業のない時間は、寮の自室で待機するか、パソコン室で自習するなどして過ごします。
私は大学に行ったことはないのでわからないですが、大学の授業みたいな感じでしょうか?
通常の授業以外にも修学旅行みたいな1泊旅行や文化祭のような行事もあってとても楽しかったです。
印象に残った授業・役に立った授業
1年間の生活訓練期間の中で、歩行訓練と調理訓練は今でも役に立っています。
調理訓練では、視力に頼らず手の感覚で皮むきや包丁を使う方法や、ガスコンロの使い方、煮物やみそ汁、野菜炒めの作り方などを指導員が1対1で行います。
この授業の経験は、今の生活にも役立っていて、体調がよく気分が乗っているときは自分で簡単なみそ汁や野菜炒めを作ったりしています。
歩行訓練では、基本的な白杖の使い方、杖を振るときのフォームの練習、電車の乗り方など実際にケースワーカーさんと外に出て訓練を行います。
基礎的な訓練が終わると、実際に一人で外に出て目的地へ到着する訓練が始まります。
ただし、ケースワーカーさんは少し後ろについてくるだけです。
なので基本は、利用者本人で駅員さんや周囲の人に助けてもらいながら目的地に向かいます。
私は学生時代まで白杖を持たずに歩いていたので、白杖の基礎的な使い方を習得しなければ施設外へ出かけられないというルールが厳しかったです。
しかし今では電柱や柱にぶつかることもなくなり、道の色で段差や凹凸があるか確認するたび足で確認する必要もなくなったので、歩行訓練を受けていてよかったと思っています。
様々な授業の中で私が印象に残っているのは、活字の書き方の授業でした。
この授業は、弱視の方と全盲の方が両方参加し、進行性の視覚障害の方や全盲の方でも手書きサインが書けるように、活字を忘れないようにという目的で行われます。
私は活字も一応読むことができますが、漢字がとても苦手で読み書きのほとんどが点字でした。
しかし指導員の方が口頭で文字の配置や形を教えてくれたため、初めて「漢字を書くのが楽しい!」と思えた授業でした。
この教え方を子供の頃に教わっていたら今の活字嫌いはなかったんだろうなぁって思えるほどです。
最後に
今回は、視覚障害者の生活訓練施設についてお話しました。
当時を思い出しながら書いていくと、思ったよりいろいろ出てきますね。ちょっと長くなってしまいました。
次回は、視覚障害者の職業訓練についてお話していこうと思います。