歩くためだけじゃない~白杖(はくじょう)のひみつ~

歩くためだけじゃない~白杖(はくじょう)のひみつ~

杖というと皆さんはどういうイメージをお持ちでしょうか?体を支えるものとか、歩行の助けとなるもの、腰の高さくらいのものをイメージする方も多いかもしれません。

視覚障がい者が携帯している「白杖」は、移動の助けであるとともに、周囲の環境を確認するもの、自身が視覚障碍者であることを周囲に知らせる意味合いもあります。「白杖」は、法的には「盲人用安全つえ」といいます。

今回は、視覚障がい者が使う白杖(はくじょう)についてご紹介します。

白杖を持つ理由

冒頭でも触れていますが、白杖は視覚に障がいがある方が安全に移動するためのアイテムであるとともに、周囲に「視覚に障がいがありますよ」とお知らせする意味もあります。

 

なぜ周囲にわざわざ知らせるのか?

それは、例えば中途で視覚に障がいを負った場合、見た目で視力が悪いということが認識されず誤解を受ける場合があるため、少し視力があるなど、杖なしで行動できる方でも白杖を携帯します。

 

わたしに関しては、昼間と夜、晴れた日と曇り・雨の日など、状況によって見え方が異なったり、歩くために前もって周囲の状況を把握しているか否かで行動が変わります。特に夜は極端に見えなくなるため白杖をもって行動するようにしています。

 

道路交通法14条では、はっきりと目に障がいがある方(全盲・弱視など)は、白杖もしくは盲導犬を連れて歩行することが明記されています。

ある友人のケース

東京にいたころのお話です。

わたしと友人と指導員の方が駅に向かって歩いていました。わたしも友人も弱視で、それぞれ一人で歩いていたんですね。友人は、保険代理店を営んでいる方で、見るからにビジネスマンという感じでしたが、中途で視覚に障がいを負ってしまったため視野が狭く、思わぬところで人にぶつかってしまったり、つまずいてしまったりということがあったようです。

 

その日も普通に歩いていたのですが、すぐ近くにいたご婦人とぶつかってしまったようなんです。特に双方とも転んだりケガするようなことはなかったのですが、ご婦人はすごいけんまくで怒っておられました。わたしは状況がわからず、指導員の方はあっけにとられて何も言えない状態でした。友人は言い訳をすることなく、ひたすらご婦人に謝っていました。

このとき、もし友人が白杖をもっていたら、もしかしたら双方がいやな思いをするのが軽減されていたのではないかと思います。

 

白杖の役割

白杖の役割は、先のご紹介したように、周囲へ視覚障がいがあることを知らせる目的と、障害物や道路状況を把握し、安全に移動する目的で使われます。

本人も周りの人も気をつけながら安全に移動していくために、白杖を携帯しておくことは重要です。

 

白杖のかたち

白杖には、継ぎ目のないまっすぐな直杖(ちょくじょう)タイプ(rigid canes)と、継ぎ目があってコンパクトに折りたためるタイプ(folding canes)があります。

直杖タイプは継ぎ目がなく、強度が高い素材を使っています。一方折りたたみタイプは、かなりコンパクトなものもあり、バッグに収納できるので女性に人気です。

 

目的に合わせた白杖の種類

白杖は使う目的によって3つに分類することができます。

 

シンボルケーン

弱視の方が周囲に視覚障がいがあることを知らせる目的で使うもので、ID(アイディー)ケーンともいいます。このタイプは、必要なときにすぐに取り出せるよう折りたためるタイプとなります。

 

ロングケーン

一般的に白杖として知られているのがこのタイプです。例えば、白杖のみで歩行する場合いつも2歩先の障害物を把握することで先を予測し安全に歩行するために長めに設定されています。

ロングケーンは、白杖の3つの使用用途(安全確認と安全の確保・シンボル的・音の反響効果)すべてを網羅した杖とあんります。これには直杖タイプと折りたたみタイプの両方があります。

 

サポートケーン

別名身体支持杖といい、歩行の際に支えが必要な方や高齢の方に使われています。持ち手(グリップ)が柄になっていることや、頑丈で柔軟性のある素材を使っている直杖タイプであることが特徴です。

 

日常生活用具の給付

さまざまな障がい者に対して、日常生活に必要な用具を選定し、給付または貸与する制度です。※金額の1割は本人負担となります。

白杖の主な価格帯を調べてみたところ、主に5,000円から20,000円以内となるようですが、これを負担していただけるのはとってもありがたいですよね?

給付を受けるには、お住まいの地域の市町村役場障害福祉課にて、申請する必要があります。詳しくは各障害福祉課へお尋ねください。

 

まとめ

今回は、視覚障がい者が使用する「白杖」について、用途や種類・給付制度などをご紹介しました。

なお、単独歩行用の白杖を選ぶときのポイントとして、まず身長から43㎝〜48㎝を引いた長さを選びます。杖を真っ直ぐに立てたとき使用者の みずおち より上、脇より少し下くらいの高さが理想的です。今はネット購入も可能ですが、ご購入を検討される場合は、できるだけ実物を見て長さを確認することをおすすめします。

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