大学生プロデュース視覚障がい者向けお役立ちグッズ開発秘話

大学生プロデュース視覚障がい者向けお役立ちグッズ開発秘話

Sカレ(Student Innovation College)は、リアルに販売される商品を目指して、大学のゼミ対抗で行われるインターカレッジです。このSカレで2020年、某大学生チームが考案した視覚障がい者向けのお役立ちグッズが選ばれ商品化されたということがありました。視覚障がい者にまったく加かくぁりがなかった若い方々がこういった取り組みをしてくださっていたことに、感謝の想いでいっぱいです。

そこで今回は、大学生が商品開発に至った経緯や背景について、ご紹介したいと思います。

Sカレってなに?

インターネットカレッジは、「大学間の〜」という意味が大元ですが、現在はインカレの名称で知られています。

大学の枠を超えたサークル活動や、大学対抗のスポーツ大会も有名ですよね?

 

冒頭でもお伝えしていますが、ここでご紹介するのは、各大学対抗の商品企画開発の全国大会です。

まず企業から商品企画のためのテーマが出されます。続いて各大学3年のゼミのメンバーで企画を練り、テーマに基づいた商品企画案をFacebookで公開します。公開された商品企画案についた「いいね!」の数が評価の対象となり、コメントで寄せられた意見をもとに企画を改善をはかり、優勝を目指すものです。優勝が決まった商品企画案は、実際に商品化され、店頭で販売されるという仕組みです。

 

企画内容は?

そのとき企業からは、『社会課題を解決する印刷製品』というテーマが出されました。

某大学の学生さんの中では、まずごみ問題や環境問題に関係した商品開発という提案がありました。

しかし、さらに話し合いを進めていく中で、メンバーの一人から、コンビニで見かけた視覚障がい者の方が困っている様子を見かけたという話がありました。

その人は、レジでポイントカードを出そうとしていたそうですが、手探りで目的のカードを探すことができず困っていたのだそうです。その話からゼミメンバーは、視覚障がい者の困りごとを調査しようという話になったそうです。

 

見えなくても使えるシール開発をしよう!

視覚障がい者には、どんな困りごとがあって、解決するためにどんな工夫をしているのか調査しました。

その中で、クレジットカードの確認は文字の凹凸で認識していること。宅急便の不在連絡票は、伝票の端っこの切れ込みで認識していることなど、目で確認できない分の工夫が必要であることがわかったそうです。

 

わたしが以前訓練を受けていた埼玉の某障がい者向け職業訓練校の同期(視覚障がい者)の人に、ヤマト運輸の本社に就職した方がいました。確かその人の提案で不在連絡票にネコミミ型の切れ込みを入れるようになったと聞いたことがあります。これも社会の困りごとを解決する方法ですね

ピンチをチャンスに!

さらに学生さんの調査は続き、触った感じが同じなのに中身が違うレトルト食品や、調味料などの識別が難しいということがわかったそうです。

 

このような調査を経て彼らが企画したのは、「デコペタシール」という商品の企画でした。

この商品は、凹凸感があり触って確認できるシールです。いろいろな物に貼りつけることでそれが目印となり、目が見えなくても物の識別ができるというものです。

 

さらにこの企画案をもとに試作品もつくり、当事者へのヒアリングも行ったそうです。

そこで得た意見には、「形がわかりにくい」や「シールがはがしにくい」、「まったくわからない」といった厳しい意見もあったようです。

 

商品企画案が暗礁に乗り上げたかのように思えましたが、励ましの言葉や賛同の声もあり「自分たちの目指している方向性が間違っていないんだ」と確信し、さらにヒヤリングを重ね、改善点を探っていきました。

 

触って識別できる工夫

ゼミメンバーが当初考案したのは、シールの形を星やハートにしたそうですが、ストライプやドットなどの模様を立体化することで、触ってわかりやすいという賛成の意見が多かったので、その方向ですすめることになりました。

ヒヤリングした方々は61人に増えて、「わかりやすい」という意見を多くいただけるようになったそうです。

 

決戦の日大会当日

大会当日はコロナ禍でオンライン開催となりました。

この大会に臨むにあたって、彼らには2つの考えがありました。

まずは、見えない世界をイメージしてもらうために、審査員には目を閉じて聞いてもらいました。

さらに、視覚障がい者がどんなことに困っているのか、ヒアリングで得た生の意見を聞いていただきました。

おそらく、ほとんどの審査員が視覚障がい者とかかわりがないと考え、実際の意見を聞いていただいたうえで、いかにこの商品が必要かを丁寧に説明しました。

 

商品の構想からダイアログ イン ザ ダークへの取材、当事者へのヒアリングを重ねようやく発表にこぎつけた彼らは、審査発表のときを緊張の面持ちで待っていました。

 

ちなみに、ダイアログ イン ザ ダークとは、を完全に遮断した暗闇の空間で、全盲者の案内で移動したり食事をしたり、コミュニケ―ションを楽しむソーシャル・エンターテイメントです。

 

結果は?

そして、いよいよ結果発表のとき。

彼らが提案した「視覚障がい者の困りごとを解決したい!」という思いが審査員の心にとどき、デコペタシールが優勝となりました!

 

たくさんの思いとともに、彼らの喜びはひとしおだったことでしょう。

 

まとめ

今回は、Sカレという大学対抗の商品企画大会で見事優勝した「デコペタシール」の制作秘話にフォーカスしました。

 

わたしがお店でこの商品を見つけたときは、そんな秘話があったなんてまったく知りませんでした。しかし、見た瞬間に「視覚障がいの人も使えるかも!」と、感じたのを覚えています。

 

誰かの笑顔につながるお仕事ってすばらしいです。心からの感謝をこめて。

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