特発性大腿骨頭壊死症により人工股関節置換手術を受けた経緯と、手術後の生活について体験談をまとめています。
※この記事は、2019年10月16~17日に公開した「人工股関節を入れて身体障害者になるまでのこと その1~その5」のうち、入院・手術体験や手術後の生活などに関する部分を修正・加筆してまとめたものです。
はじめに
今から約15年前、私は特発性大腿骨頭壊死症と診断されて人工股関節置換手術を受け、身体障害者となりました。
ただ、手術から15年以上が経っており、慣れもかなりあるためか、人工股関節を入れていることに伴う不自由はあまり感じません。
また、最近の人工股関節は技術の進歩によって性能がかなり良くなっており、健常者とほぼ変わらない生活ができるようになっているそうです。
この記事では発症から手術を受けるまでの経緯と、手術後の生活について体験談をまとめています。
発症から股関節の異常が見つかるまで
症状を自覚したのは今から16、7年前、歩いていると左足の太ももに「ズキッ!」と痛みが走ることに気づいたのが最初でした。
初めのうちは「そのうち治るやろ」と思い放っておいたのですが、1週間経っても2週間経っても痛みが引きません。
そこで、近所の接骨院や整形外科医院に通ってリハビリ(という名のマッサージと電気ビリビリ)をしたり、痛み止めの飲み薬や注射(神経ブロック)をしてもらったりしたのですが、それでもなかなか治りません。
そんなこんなで、太ももではなく股関節の異常であるらしいことがわかったのは、痛みが出てから何ヶ月も経った頃でした。
整形外科医院の医師が、左右の太ももの太さが異様に違うことに気づき、レントゲンを撮ってみると左足の大腿骨の一番上、骨盤にスポッとはまる部分が他とは違う色で写っていたのです。
紹介状を書いてもらい、大病院の整形外科にある股関節専門外来で診てもらった結果、「特発性大腿骨頭壊死症」と診断されました。
大病院の医師いわく、年齢(当時30代前半であり、その頃、人工股関節の耐久年数は一般に10~15年程度と考えられていたため)からして自分の骨を利用する「骨切り術」という手術が望ましいのだが、私の場合は壊死部分が大きすぎて難しいとのこと。
治療方法としては人工股関節(人工骨頭)しかないようで、私もその手術を受ける決意をしました。
入院
手術の数日前に入院。
入院した日の夕方に手術の説明があり、内容は、
・手術時間は1時間くらい
・おそらく輸血は必要ない
・手術は半身麻酔で行う
といったことでした。
また、装着する人工股関節についても説明がありました。
「通常は10年から15年で寿命が来るので交換しなければならないが、今回のものは年齢のことも考えて最新式の製品を入れるので25年くらい持ってくれればと期待しています」
とのこと。
手術前日には、へそから下と左足全体の剃毛がありました。
ちょうど看護学校の学生さんが実習で来ていて「剃毛を学生にさせてもいいですか?」と聞かれたので、「いいですよ」と返事。
未来の看護師さんによる剃毛もつつがなく無事終了。
部屋でくつろいでいたところ、別の看護師さんがやってきて「学生がやったのでチェックしますね」と言うので、再び下半身スッポンポンになってチェックしてもらいます。
「あ、剃り残しがあるわ。剃刀取ってくるから待っててね」
とおっしゃって出ていったので、そのままでしばらく待機。
看護師さんが剃刀を持って帰ってきて、私を見るなり一言。
「あ、パンツは穿いてもいいですよ~」
もっと早く言ってほしかったです。
下半身スッポンポンのままで、じっとベッドに寝て待っていたのに・・・。
手術~退院まで
手術当日は朝食抜きで、浣腸をされました。
手術時間が近づいてきたら、歩いて手術室へ。
ストレッチャーに乗せられていくと思っていたので、ちょっと拍子抜けです。
手術室には何人かの先生と、何人かの看護師さん。
手術台に寝ると、点滴を入れられ、前麻酔のあと腰椎麻酔。
下半身がどんどん痺れていきます。
その間、執刀医以外の先生たちはずっと関係ないことをしゃべっています。
「あんなんは親が悪いんや!親が!」とか・・・
なんか、ドラマとはずいぶん違うようです。
おかげで、いつ手術が始まったのかすらわからないくらいでしたが、予定通り1時間ほどで無事手術終了。
「入りましたで~」
と人工股関節が写ったレントゲン写真を見せられてから、(今度こそ)ストレッチャーで手術室を後にしたのでした。
ちなみに私は、手術はできれば「全身麻酔で眠っている間に」と思っていたので、入院した日の説明時にそのことを告げたところ「眠たくなる薬を点滴に混ぜときますわ」と言われていました。
しかし、手術中はまったく眠くならず、ようやく眠たくなってきたのは手術がもう終わろうかという頃。
おかげで先ほど書いたような医師同士の会話や音などが全部丸聞こえでした。
もしかしたら、当時は結構な量の睡眠薬を毎日飲んでいたので、その影響で薬が効きにくかったのかもしれません。
手術後は、ベッド上で軽いリハビリ&安静が約2週間。
その後、車いす→松葉杖→普通の杖と順に左足にかける体重を増やしていく予定でした。
が、私の場合は痛みが強く、松葉杖を使って歩けるようになった状態で退院となりました。
入院からおよそ1ヶ月半でした。
ただ、最近は2週間の安静期間がなく、すぐに体重をかけてのリハビリが始まるそうで、もっと入院期間が短くなっているようです。
退院後、数週間は自宅で静養兼リハビリ。
1週間ほど経って、ようやく普通の杖で歩けるようになった頃から仕事にも復帰し、徐々にいつもの日常生活へと戻っていきました。
手術後の生活 不自由を感じることやできないこと
思ったほど不自由を感じることはないのですが、手術からもう15年が経っているので慣れてしまった、ということがあるからかもわかりません。
それでもあえて挙げるとすれば、次のようなことがあります。
足を引きずる
歩くときは、どうしても足を引きずってしまいます。
ただし、これには相当個人差があるようです。
これまで私と同じく人工股関節を装着している方に何人かお会いしてきましたが、健常者と変わらず普通に歩ける方のほうが多いような気がします。
ですが、足を引きずるどころか、杖や手すりなしでは歩くことが難しい方もいらっしゃいました。
手術から約15年が経過した現在の私は、杖なしでも歩くことはできます。
ですから、家や会社の中では杖をつかずにいます。
ただ、少しでも人工股関節を長持ちさせたいので、外を歩くときは杖を使っています。
あと、長時間歩いたり、立ちっぱなしだったりすると足腰が痛くなります。
このへんは身体のバランスが崩れているので、しょうがないのかもしれません。
熱を出すと痛くなる
扁桃腺を腫らすなど、何かの感染症にかかって熱を出すと、人工股関節の入っている左足が痛くなることがあります。
これがなかなかつらくて、歩くのが相当しんどいときもあるくらいです。
手術後まもなくの頃にこうなったときは「人工股関節がズレたのか?」とか、「人工股関節が感染したのか?」(人工股関節の手術直後は感染に注意が必要なので)などと心配し、手術をした病院や、あちこち他の病院にも行ってみました。
が、どこの病院でも異常は見つからず、今でも原因はわからないままです。
ただ、最近では体質が改善されたのか感染症そのものにほとんどかからなくなりましたし、歩けないほど痛くなることも滅多にありません。
なお、他の人工股関節を入れた方で、このような症状が出るという話は聞いたことがありませんし、どの医師も不思議がっていましたので、これは私だけのことだと思われます。
その他できないことや避けていること
まず、走ることはできません。
医者からも走らないように言われています。
同じように、飛んだり跳ねたりもしないようにしています。
また「重いものを持つこと」「長時間歩くこと」「長時間立ちっぱなしでいること」なども、医師の指導により避けています。
スポーツに関しても激しいものはできません。
ただ、最近の人工股関節は性能や耐久性も改善されていて、テニスなどのスポーツができる場合もあるそうです。
あとは、あぐらをかくこともできません。
座るときは椅子、もしくは正座、もしくは足をのばして座ります。
トイレに関してはほぼ洋式しか使いませんが、頑張れば和式でもなんとかなります。
このように書き出してみると色々と不自由があるように思われるかもしれませんが、先ほども書いたように私自身はそれほど苦痛には感じていません。
手術後の生活 人工股関節を装着していてもできること
意外にいろんなことができますが、私が「できる、あるいはやったことのあること」には以下のようなことがあります。
もちろん医師に確認した上で行っています。
自転車に乗る
「大丈夫なの?」
とよく聞かれますが、自転車は問題なく乗ることができます。
実際にほぼ毎日通勤で乗っています。
医師いわく、歩くことに比べて股関節にかかる負担が少ないので、大丈夫なんだそうです。
ただし「転倒しないよう注意するように」とのことでしたので、安全運転を心がけています。
水中ウォーキング・水泳
水の中では体重による負担がかなり少なくなるので、水中ウォーキング、水泳ともに問題なくこなすことができます。
人工股関節を装着している人ができるスポーツとしては、最も推奨されるのではないでしょうか。
私自身も手術から数年後、ジムのプールへ毎日通い約30㎏の減量(90㎏台→60㎏台)に成功しました。(最近は立派に成長してきていますが・・・)
ただし股関節の動きの都合上、平泳ぎは難しいです。
旅行
登山や長時間歩くといったことさえ避ければ、旅行も問題なくできています。
なお、空港などで金属探知機が人工股関節に反応してしまうことがあります。そのときは障害者手帳を見せて説明すればOK。
人工股関節を入れてから何回も飛行機に乗っていますが、ややこしいことになった経験はありません。
軽いウォーキング
歩くことは股関節に負担がかかるので、できるだけ避けた方が良いと言われました。
ですが、まったく歩かないというのも健康面で問題があると思うので、15~20分程度のウォーキングはしていた頃もあります。
今はサボっていますが・・・。
これ以外にも、股関節に負担のかかり過ぎないことであれば、健常者とあまり変わらず行うことができます。
立ち仕事も台所仕事のような短時間なら大丈夫です。
最後に
もちろん人工股関節を入れたおかげでできないこともあるのですが、思ったほど生活が不自由になることはありませんでした。
ただ単に慣れてしまっただけかもしれませんが・・・。
ま、逆に言えば、慣れてしまえばどんなことでもなんとでもなるということかもしれません。
今回の記事が、これから人工股関節を入れる可能性がある方の参考になれば幸いです。
人工股関節と障害者手帳・障害年金の関係についてはこちらの記事をご覧ください。↓